GOEMON

開いた口が塞がらなかった、いや口半開きで船を漕いでいた『CASSHERN』と比べると、残念ながら作品としてまとまっていると思う。もう笑うしかないタイミングで椎名林檎のヴォーカルが聞こえてくるシーンとか、そんなトンチキなことも無かったし。これではネタにならない。

とはいえ、なんせ『CASSHERN』を作った紀里谷和明監督。あの独特なビジュアルとトンデモ演出は健在だ。

序盤の草原での戦闘シーン。時代劇モノの漫画ではよくあるシチュエーションなのだが、風に揺れる草など見ていると監督はVFXで劇画を作りたいんだろうかと思わせる。目指すところがあって挑戦した結果なのか、それともアレが到達点なのか判断できない。どうせCGを全面に押し出すなら『スピードレーサー』くらいやってほしい。*1

中盤辺りまでくると、衣装やセットの統一感の無さが気になってくる。派手好きと伝えられている秀吉の衣装は理解できなくもないが、茶々はどう見ても中国じゃないか。世界観が日本なのか、中国なのか、ファイナルファンタジーなのか分からない。だが徳川兵の甲冑が『スター・ウォーズ』なのは間違い無い。

そして、戦う主人公が唐突に反戦主義者になるところは、伊勢谷友介から江口洋介へしっかりと引き継がれている。「死んだアイツは復讐なんか望んじゃいないんだ!」と子供を叱りつつも殺したい奴は殺し、タイアップをしている戦国BASARAな無双アクションは、もちろん忘れていない。

紀里谷映画は時代背景やモデル人物を気にしちゃ負けだ。むしろ前知識など持って行かずに、全てオリジナル作品として観られれば幸せだと考えよう。

今回でパワーダウンしてしまった紀里谷和明監督だけど、次回作での良いネタを期待して待ちたい。

追記

忘れてた。本作一番の萌えキャラことチェ・ホンマンは、序盤からちょいちょい存在感をアピールしてくる。だが実際の活躍シーンは少なかった。とても残念だ。

*1:日本で『スピードレーサー』は興行的にイマイチだったようだけど、僕はアレを観て「日本がCG映画を作っても絶対に敵わないなあ。アニメしか作れないよなあ」と思った。