アインシュタイン丸かじり

アインシュタイン丸かじり」は、物理学者アインシュタインその人についてまとめ上げた書籍。

本書は「ちなみに」「余談だが」「閑話休題」というフレーズがとにかく多い。3ページに1回は出てくるんじゃないだろうか。学校の面白い先生の中で、こういうタイプの授業する方がいたなあ。

普通、話題が逸れまくる話っていうのは、軸が見え辛くなる上に情報量が増えるので聞く方は飽き飽きするもの。オタクの話がつまらないと言われてしまうのは、聞く方の守備範囲を飛び越えて話を広げてしまっているので、当人にしか面白くない話になってしまっているから。という指摘はよくある。

アメリカン・サイコのパトリック・ベイトマンが、殺人の前に趣味語りをしているのがそれに似ている。当人は聞いて欲しいのかもしれないけど、殺しちゃったら自己陶酔でしかないもの。まぁあの映画は名前を間違えられる主人公に象徴されるように、あまりにも他人に無関心であるアメリカ社会がアメリカン・サイコであるとか、そんな話もあるけど。

ところでそう、ここで「アメリカン・サイコのパトリック・ベイトマンが〜」と言い出した僕の話は、アメリカン・サイコを知らない人や、映画に興味が無い人にはどうでもいい話になるわけだ。とは言え、そもそもオタクというのは、他人の守備範囲に無いものを披露して喜びたい人間なのでしょうがないね。

閑話休題

このタイプの授業の面白い先生は、軸をブレさせずに生徒の興味を引く話題を持ってくるのが非常に上手い。とても好奇心が強く勉強家で、それでいて相手の立場に配慮できるバランスの持ち主だ。正に本書はこのタイプで、アインシュタインその人を軸に、よくもまあここまで飽きさせない話題を持ってくるものだと感心しきり。本当に著者はアインシュタインが大好きなのだなあと思わせられる。どうやら、あまりにも好きで引き出しを消化しきれなかったようで、最後にはアインシュタインの解説付き名言集まである。

「丸かじり」のタイトルに違わず、アインシュタインという人間を知ることのできる一冊だった。