元広告業から見た『はてな』 - 媒体規模編 -

はてなダイアリーを始めたときのエントリで

そろそろ自分の短い就労経験や、これからの記録を残して行きたいと思う。

僕がはてなダイアリーを選ぶまで - HELL NEET

とか書いたくせに、まだ一つも広告についてのエントリを書いていない。せっかくはてなでブログを始めたわけだし、最初のネット広告系エントリは『はてな』について書いていきたい。まぁ広告系エントリって言っても、「ここの広告枠は期間保証型1週間で想定○○万imp。想定CTRが○.○%だから…」みたいな話をするつもりはないよ。

広告媒体を手っ取り早く知るには

会社情報:広告掲載について-はてな
ネット広告に限らず、広告関係者が広告媒体について参考にする資料として、各媒体社が制作している媒体資料(メディアガイド)がある。媒体資料とはユーザーデータやページビューなどの媒体概要と、各広告枠の詳細や料金表をまとめた物。僕も前職ではとてもお世話になった。幸いはてなの媒体資料は一般に公開されているので、こちらの最新版(2009年4〜6月版)を見ながら書いていくことにする。

ちなみにネット広告媒体は、四半期ごとに広告枠の価格や形式の見直しが行われるため、媒体資料も3ヶ月おきに新しいものが公開される。基本的にはユーザーデータなども更新されるので、各時期の媒体資料を見比べることで、媒体の成長過程を見るのも面白い。

会社情報:広告掲載について-はてなの共有ファイル一覧
なお、はてなでは最新の2009年4〜6月版から2006年7〜9月版まで、3年分もの媒体資料が公開されている。太っ腹だ。

はてなの媒体規模

登録会員数は、はてなIDを持っている人。月間読者数(ユニークユーザー数)は、ひと月の間にはてなを訪れた人の数だ。ページビューは閲覧回数の延べ数のことだけど、ユニークユーザー数は同じ人が何度訪問しても1ユーザーとして数える。

まぁはてなの数字だけみてもよく分からない。はてなウェブサービスとしてはどのくらいの規模なのか?とりあえず国内の他社サービスと比べてみる。

国内メジャーCGMとの比較
サービス名 会員数(万人) 月間ユニークユーザー数(万人)
はてな 90 1684
グリー 500(([http://gree.co.jp/news/press/2008/0529.html:title=グリー株式会社 ニュースリリース プレスリリース 2008年 GREEの会員数が500万人を突破])) 45.5*1
mixi 1,500*2 1,273.8*3
ニコニコ動画 930*4 230*5

まずは国内のメジャーCGM3つと比べてみた。データの時期がバラバラで申し訳無いけど*6、サービス別に見た会員数とユニークユーザー数はなるべく近い時期の数値を持ってきた。

mixi以外の他社サービスは、会員数の割にユニークユーザー数が少ないように見える。だがこの3サービスは、会員登録したユーザーがログインした状態でのみ、コンテンツを閲覧できるところが重要だ。つまり、mixiユーザーはとても良く飼い慣らされたユーザーであることが分かる。

一方はてなは、会員でなくともコンテンツを閲覧できる。多数のアクセスを集めるダイアリーもあるので、ユニークユーザー数が会員数を上回ること自体は不思議ではない。

しかしながら、はてなには『はてなキーワード』など複数のサービスで、実際には内容が無いページもgoogle検索で上位に出やすいという特徴がある*7。媒体資料にはその辺について記載がないので、このユニークユーザー数には「はてなを利用する意思を持たずにはてな内へ誘導され、期待していたコンテンツが存在しないことにションボリしてページを閉じたユーザー」も含まれているかもしれないので注意が必要だ。

ブログサービスを主とする他社との比較
サービス名 会員数(万人) 月間ユニークユーザー数(万人)
はてな 90 1,684
livedoor Blog*8 260 1,650
FC2ブログ*9 320 1,900
Ameba*10 450 1,350

はてなと同じく、ブログを主要サービスとする他社と比べてみた。はてなが他社と比べて会員数が桁違いに少ないにも関わらず、ユニークユーザー数ではlivedoor Blogと肩を並べている。僕はこの時点ではてなの媒体資料に載っているユニークユーザー数は信用しない。いくらなんでも90万人の会員が作るユーザーコンテンツが、会員数で圧倒している上に2chコピペブログの多くを有するlivedoor BlogFC2ブログと、同程度のユニークユーザー数を叩き出しているとは考え難いからだ。

疑いたくなるユニークユーザー数

古いデータになるが2008年10-12月版の媒体資料*11には、はてなダイアリーの月間ユニークユーザー数は1,000万人とある。そしてこの資料にはサービス名の横にドメインも記載されているので、このユニークユーザー数は「http://d.hatena.ne.jp/」以下での数値だと思われる。ということは、はてなダイアリードメイン以下に位置するはてなキーワード(http://d.hatena.ne.jp/keyword/)のユニークアクセスも、この数値に含まれていることになる。この事を考えると、最新版の媒体資料に記載されているはてなの月間ユニークユーザー数には、先述の「はてなを利用する意思を持たずにはてな内へ誘導され、期待していたコンテンツが存在しないことにションボリしてページを閉じたユーザー」が含まれている疑いが更に濃くなる。

とは言え、実際にこの数値がどのように計測されているのかをこの場で証明するものが無い。純粋なユニークユーザーを表す数値としては信用できない。と言うところまでしかここでは辿り着けない。

はてなが無名なのは当たり前

サービス名 会員数(万人) 月間ユニークユーザー数(万人)
はてな 90 1,684
宅ふぁいる便(([http://c.filesend.to/pr/advert.html:title=広告掲載について 無料大容量ファイル転送サービス「宅ふぁいる便」])) 117 90
オズモール*12 80 86
ZOZORESORT*13 100 不明

最後にはてなと同じくらいの会員数のサービスと比べてみる。

そう言えば、はてなの偉い人は以前こんなことを言っていた。

はてな、知ってますか?」――街で聞いて回って愕然とした。「誰も知らない」

近藤社長「未熟だったと思う」 はてなが目指す“脱IT系” (1/2) - ITmedia News

「愕然とした」って言っているが、会員数で考えればこれが当たり前だ。上に挙げた同じ会員規模のウェブサービスのひとつを選んで、街中で無作為に知っているかと聞いて回ったとして、半数の人が知っていると答えてくれるだろうか?

データの大きいファイルを頻繁にやり取りする人であれば、宅ふぁいる便を知っているかもしれない。オズマガジンを読んでいる人であれば、オズモールを知っているかもしれない。ファッションにお金と気を使う人であれば、ZOZORESORTを知っているかもしれない。はてなもIT系の仕事人か、ネットが生活の主軸になっている人であれば知っているかもしれないが、そうでない人がはてなを知らなくて当然だ。はてなmixiを超えて、Yahoo!のような誰でも知ってるウェブサービスを目指すと言うのであれば、それはまだまだこれからの段階なのだ。

がんばれはてな!!

>>ユーザーデータ編につづく

補足

媒体資料より引用した画像について

「*」が付いている項目ははてな社調べ(2008年12月)、「**」が付いている項目はNielsen//NetRatings調べ(2008年9月)です。