ネット広告の曖昧さは他メディアよりも命綱としての役割が強い

過去にもチラホラと出てきた話ではあったのだけど、なんかまた盛り上がってきたね。まぁこういう話が出てくると、「ネット広告も信用ならねえ」って所に行き着くのがオチだ。僕もそう思う。

上記のような、資料を眺めただけのエントリを書いておいて今更なんだけどね。ブコメでも言ってくれた方がいたけどその通りで、単純に信用していい記事ではない。はてながキーワードでユニークを稼いでいるのは予想でしかないけど、50代のユーザーがどれだけいても、広告に対してアクティブじゃなければ広告媒体として存在していないのと同じだ。

広告会社の仕事範囲は決まっていない

ところでCAって、一般にはブログサービスやら色々やってるメディア企業に見えているのだろうと思う。でも僕は前職の立場もあって、CAは広告代理店だと思っている。事業内容の2番目には『インターネット広告代理事業』と明記されているし、名前もサイバー"エージェント"だしね。

この広告代理店ってのが面倒臭くて、広告業をやってる企業というのは、ドコからドコまでが自分の仕事なのかなんて決まっていない。広告の話を持ってくるだけで、実務は全て外注している広告屋もあれば、メディア運営から広告主への営業、クリエイティブまで全て自社でやるような広告屋もある。

日本の広告業界って『一業種一社制』が存在しないので何でもアリだ。例えば一つの広告会社が、自動車メーカーAと自動車メーカーBの両方と契約をしたりする。顧客利益を最大限に守るのがビジネスルールだと考えると、相当マズい状況は常にそこら中に存在している。

この『一業種一社制』ではない業界は、旧来の広告主・大型代理店・メディアにはおいしいものだった。一部の広告代理店がある広告主業界を牛耳ることで、メディアの商流は限られるので広告料金が下がらない。また、広告主に不利益な情報は広告代理店を通してメディアにストップをかけられるし、余計な口を開かなければメディアにもお金が入ってきたということになる。

だがネット広告では、この非一業種一社制の意味が違ってくる。旧来の大型代理店が上手いこと支配できなかったので、かなりカオスな業界に仕上がった。広告枠を持っているメディア企業や下請けの広告会社が、元請け会社を通して受注していた広告主に直接営業をかけている、なんて話は年に何度も聞いた。人脈とか僕個人の信用の問題を除けば、突然「僕一人だけど広告代理店でござい」と営業して回ることも可能だ。

もちろん広告主も、広告会社を一つに限定することは無い。なので広告費が多い企業であるほど、広告会社から「ちょっと待ったー!!」のラブコールが押し寄せてくる。ネット広告業界は広告主・広告会社・メディアが織り成す、四次元的三角関係の昼ドラだと思ってもらえればいい。もっと簡単に言えば、みんなが「この泥棒猫!!」である。人間単位、会社単位で相関図が目まぐるしく変わってくる。

営業的に自由でも人材は勝手に育つわけではない

そんなカオスな状況で、みんな切磋琢磨して全体のレベルアップに繋がれば良いのだけどね。最終的にGOサインを出す広告主に、広告の良し悪しを判断できる人は少ない。広告会社の人間にも、そもそも良い広告とは何なのか分かる人なんてあまりいない。そうなると広告会社の勝負所はデータ、納期、インパクト、人柄、価格に偏ってくる。

なので「ネット広告業界の人間は、大げさに誇張したデータの話ばかりで不勉強だ」と総合代理店の人に言われたり、納期を早くするためにサービス残業しまくったり、無駄にフレンドリーな営業が多かったりするわけだ。

そして価格にまで至ると酷いもので、自社で決めた定価の10%くらいで提示してくるメディアまである。もうメディアとして終わってるトコとか、枠数なんて関係無しにメール広告を配信できるポイントサイトなんかが多いのだけど、こういうトコにはやっぱり怪しげな広告主が集まってきて悪循環になっている。もう質も単価もモラルも無く、ダンピングしまくって広告を大量に垂れ流すことで利益を出している感じだ。

正直に申し上げると、僕も怪しげな広告主の案件を扱ったことがある。僕の仕事によって不特定多数の人に怪しげな広告が配信され、またひとつ怪しげな商売が成り立ってしまった事実には今でも後悔している。まぁもちろん売上なので会社からは評価されるけど、数字的な成績を見ても、顧客や同僚に褒められても、自己嫌悪しか湧いてこなかった。僕は二度とエンドユーザーを食い物にする仕事はしない。

商品そのものの『曖昧さ』が命綱だったりする

何にせよ、勝負できるカードを持った広告会社ならまだいい。問題なのは、偽造カードで勝負する広告会社だ。新聞の押し紙やテレビの視聴率のような疑わしいものがあったとしても、前述のように販売窓口も価格も決まっている広告枠しか無いのならやっていけたんだろうけどね。

広告主によって求めるものは違うとは言え、ネット広告はアクセスも効果も計りやすいはずがイマイチ信用できない。枠そのものの適性価格では商売にならないし、クリエイティブ等々で付加価値を付けると言っても、そういったものを明確にお金に換算する文化すら無いので曖昧さが必要なんだろうと思う。